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「フィロソフィー(哲学)」がコンセプトのアイドルグループ、「フィロソフィーのダンス」
その魅力を、コラムニストで哲学ナビゲーターの原田まりるが解説する。

 


 

‎神秘的なフォーメーションダンス

アイドルグループのコンセプトが多様化するなか、前から気になっていた「フィロソフィーのダンス」のライブを見てきた。

 

フィロソフィーのダンスはその名のとおり「フィロソフィー(哲学)」がコンセプトとなっている4人組のアイドルグループ。
東大の哲学科を卒業された(!)ミュージシャンのヤマモトショウさんが楽曲制作に関わっていて、歌詞も非常に哲学的である。

 

 

このグループの魅力はたくさんあるのだが、個人的に感じた「ほかのアイドルにはない」魅力ポイントをあげるとするならば、以下の2点である。

 

密教っぽい神秘的な雰囲気を感じさせるフォーメーションダンス
・ 歌詞が「哲学思想+既存のアイドル価値観へのアンチテーゼ」であり、どことなく早稲女(ワセジョ)っぽい

 

まず、1点目「密教っぽい神秘的な雰囲気を感じるフォーメーションダンス」に関して。
4人組グループのダンスフォーメーションの定番はW型や横一列であるが、フィロソフィーのダンスは左右に1:3に分かれることが多い。
立ち位置の自由度も高く、既存の型にハマっていない動きがある。

 

「既存の価値観や常識に疑問をもつ」という哲学の本質が、舞台演出に生かされているのかな、と深読みさせられる。

 

そして振りつけも「かわいい自分を見せる」ポージングより、創作ダンスを思わせる独特な動きが多い。
加えて歌詞のところどころに哲学エッセンスが入っているので、とても不思議な雰囲気があるのだ。
たとえるならば、「密教の儀式」でも見ているかのような気分になってくる。
これがフィロソフィーのダンスの魅力の1点目である。

 

“早稲女”っぽい歌詞

続いて2点目。
「既存の価値観や常識に疑問をもつのが哲学の本質」と書いたが、歌詞の内容も「アイドル活動に関しての、静かなアンチテーゼ」がつづられているように思う。

 

たとえば、「プラトニック・パーティー」という曲。
元ネタはおそらく古代ギリシャの哲学者プラトンの「饗宴」である。
そこから読み解くと、出だしの歌詞「ズルはしないの…」という部分にプラトンの「善いことを追求しろ」という思想のパロディが込められている。

 

しかしその後の歌詞を読んでいくと、アイドルのトラブルの原因となる「裏アカ問題、男性関係はなるべくルールを守ります!」という心の声を描いているようにも思えるのだ。
たとえばこんな歌詞がある。

 

ズルはバレるの
探しているから
目でみてわかるのはもちろん

 

あれもダメだし
これもダメなら
あとは自由ね
プラトニックパーティー

 

この部分をプラトン的な哲学思想とアイドルへのアンチテーゼを織り交ぜて超訳すると、こんな意味に読みとれなくもない。

 

「オタクがSNSを見張っていて、裏アカ作ったり、ファンとつながったらバレてしまうので、証拠が残らないように最低ラインは守ります!
けど、どこまでがNGで、どこまではOKなの?
男性と1対1のデートがダメで、熱愛がダメなら、たとえば合コンはOKだよね?
だって対話を楽しむ場だし」

 

あくまでも個人的感想ではあるが、フィロソフィーのダンスの歌詞は、「哲学思想+既存のアイドル価値観へのアンチテーゼ」という図式で形成されているように読むことができる。

 

よくあるアイドルソングが「大好きだよ、君のこと、ほんっとに大好きで眠れないよう〜」みたいな子どもだましソングだとしたら、フィロソフィーのダンスの歌詞は極めて“早稲女”っぽい。

 

素直な気持ちを歌いながらも、どこか理屈っぽいのだ。

 

「まあさ、好きな人ができたとしても、アイドルでいる以上はそんなこと内緒にしとくべきだけど、人を好きって気持ちは人間の根源でもあるよね〜そもそも人間の条件というのは…」

 

と展開されるような、頭の中でこねくり回した歌詞である。
そしてその理屈っぽさが非常に魅力的に感じられる。

 

哲学の本質を体現したグループ

ほかの楽曲についても触れよう。
「すききらいアンチノミー」では、哲学思想の基本である「アンチノミー(矛盾するふたつの命題)」をテーマにすえながら、「アンチ目線で見てくるオタク」の気持ちを織り交ぜた歌詞となっている。

 

この曲も「アイドルとファンの間の微妙な関係+哲学思想」と読み取ることができる。
詳しくは曲を聞いてほしいのだが「エアリプでアンチ発言をしているオタクへのもどかしさ」を歌っているように読むことができるのだ。

 

また「オール・ウィ・ニード・イズ・ラブストーリー」という曲では、「いつだって恋を、いつだって恋を期待している」という歌詞がサビとなっている。

 

歌詞からイメージできるように「いつも恋を期待している女の子」がテーマだが、やはりひと筋縄ではいかない。
この曲にもアイドル活動へのアンチテーゼが入っているのではないか? と深読みしてみると「恋愛したくていい出会いを求めているアイドルの、握手会中の心中」とも読み取ることができる。

 

たとえば歌詞のこの部分。

 

帰りに一番感動、デートにもいろいろあって良い?
眠そうなあなたも実際
クールとか思われちゃって変

 

これを超訳すると

 

「ファンのテンションが一番上がるのはライブ終了後の握手会。ぼーっとした表情のファンに対して『いつもクールでかっこいいですね!』とほかのメンバーがほめていてまじウケる」

 

と読むことができる。

 

アイドルが「反骨心」をテーマに歌うことがあるが、フィロソフィーのダンスの曲は「メンヘラチックな反骨心」ではなく「アイドルらしさについての対立命題」を淡々と掲げているのだ。

 

そもそも哲学とは既存の価値観に対して「?」を持つ学問でもあるので、フィロソフィーのダンスは「哲学の本質」を体現したグループである
今後の活躍が楽しみ!

 


 

[PROFILE]
フィロソフィーのダンス
フィロソフィーのダンス公式サイト
◆3月19日(日)、2ndワンマンライブ「Do The Strand VOL2」(渋谷WWW)開催

 


 

執筆=原田まりる
公式Twitter:https://twitter.com/harada_mariru
◆「ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。」発売中

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